2016年9月28日水曜日

暗く救いのない、しかしどこか美しい Gone In November

暗く救いのない話はひどく心に残る。話の筋が難解ならなおさらだ。とはいえ、そうした展開だけで完結する話は創作物一般にそう多くはみられない。たいていの話はどんな小さくともどこかに救いがあるものだ。ひどく暗く、まったく救いのない話。こうしたアドベンチャーゲーム以外であるとすれば映画や短編小説・漫画ぐらいのものだろうが、やはり数十分~数時間で完結するからこそ成立する表現技法なのかもしれない。

Gone In November はそんな暗く救いのない、筋の難解な短編アドベンチャーゲーム。
主人公は急性白血病および精神錯乱と診断され、数年にわたって治療を続けるも、高額の医療費のためについに預金の底がつき、これ以上の治療を望めなくなり、医者に余命数日という宣告を受けたところで鎮痛剤のみを処方されて家に帰される。家に待つものは誰もおらず、やることといえばサボテンの手入れぐらいのもの。眠りにつけば、精神の病からくるものなのか、ひどい悪夢をみるばかり。その悪夢のなかで絶えず思い出すのは「彼女」のことだ。悪夢のなかで主人公はひたすら空間を歩いていくが、いったい過去になにがあったのか、過去の記憶が思考を代替する文字となって画面に流れるように表示されていく。
「高いところは苦手?」

文脈の不鮮明な文章が途切れとぎれに現れては読み終える間もなく消えていく。このゲームの難解さはこの点からきている。レビューやフォーラムの投稿などでもその難解さは繰り返し指摘されており、私にとっての外国語である英語だからというわけでもないようだ。絶えずスクリーンショットを撮り、あとからじっくり見直すことで文脈の把握を試みても、やはりひどく難解で筋をとらえがたい。とはいえ、死にゆく人の狂気などというものはそんな脈絡のないものなのかもしれない。
「わたしのことなんて忘れて前に進みなよ。後悔するよ」
しかしこのゲームの味として、こうした狂気の内面描写がどこか美しく感じられるのだ。心を病み、過去になにか大きな悔いを残した人が、あと数日の命といわれて何を思うか。きわめて挑戦的なテーマだが、しかしアドベンチャーゲームのかたちにうまく流し込めているのではないかと思う。

ひとつ残念なのはボイスアクティングがないことで、ただひたすら長い文章を自分の目だけで読まされることがやや苦痛だということは認めざるをえないところだ。とはいえ音声があったらあったでまた違ったゲームとなっていただろうし、今のこのゲームのなんともいえない寂寥感からくる美しさが損なわれていたかもしれない。それに、そもそもが98円のゲームなのでそこまで求められるものではないだろう。

翻訳の方法は簡単そうなので、個人的に日本語化に挑戦してみたいとは思っているが、それぞれの言葉の文脈を正確に理解しなければ翻訳もおぼつかないので、私にそれがこなせるかはいまいち自信がない(その仕事にかかるのであれば、先に DLC を買う必要がありそうだ)。なので私の仕事にはあまり期待しないでほしいが、ともあれ現段階でも英語を読むだけのやる気があり、死や心の病といった問題に関心のある人にはぜひおすすめしたい。

---
2016/12/02 追記: テキストの日本語翻訳が完了しました。文脈の理解は本当にこれでいいのか、また日本語フォントの適用などといった問題は残っていますが、完成はしたのでとりあえず公開します。ダウンロードはこちらから

0 件のコメント:

コメントを投稿