2016年6月25日土曜日

タダゲーとそのありかた Journey To The Center Of The Earth / PERFECT ANGLE

前置きが主に個人的な話で無駄に長くなってしまったので、本題のゲームの話まで飛ばしたい方はこちらから。

そろそろ7月に入らんとするこの時節柄、Steam では早くもサマーセールが始まったようで、コミュニティマーケットではSteamトレーディングカードの売買がにわかに活発化している。そうした時期にあって、筆者もやはりセールそっちのけでバッヂの作成や小銭稼ぎのためにカードの排出作業に取りかかろうとしている(最近のセールにはどうも身が入らない……などと懐古老人のようなことを考えていたら、まさに私の思うところを代弁してくれるような懐古記事が書かれていた)
しかしながら、そのゲームを1時間も遊ばないうちにすぐさま忘却の彼方に放り捨てることになるとしても、仮にもインディーゲーム愛好家を名乗る身としては、よほど好みの合わないジャンルでない限り(2Dアクションや2Dシューティング、RPGツクール製の基本アセット頼りの作品は個人的な地雷が多いので避けている)はどんなゲームでもどうしても少しは遊んでみたいものだ。これはバンドルなどで偶然入手した名も知らないゲームをカードの排出のために起動して、ためしに少し遊んでみたら意外なほど良いゲームであったということが幾度もあった個人的な経験による。そもそも自分が現在所持しているゲームぐらい把握しておくべきだといわれればそれまでではあるが、積みゲーを増やしすぎるとなかなかそうもいかなくなる。ともあれそうした思わぬ「再会」の機会はできる限り逃したくはないものだ。
またそれとは別に、後に本腰を入れて遊ぶ予定があるゲームの場合、ただカードの排出のためだけにゲームを起動放置してプレイ時間の記録を無駄につけるようなまねもあまりしたくはない。そうした理由で、筆者は Idle Master のような一括放置ツールは使わず、遊べそうなゲームは少しでも遊び、好みに合わないゲームでももっぱら起動して放置という手段に頼っている。

このような個人的な方針もあり、また最近は他ゲームの翻訳に気分が向いていることもあって、ゲームの新規開拓にはなかなか乗り出せずにおり、特に遊んでみたいゲームに限って起動できずにいる。例えば以前記事にした VA-11 Hall-A も無事Steamキーを手に入れたのだが、発売直後に触って話題にできるよい機会だというのに、やはりいまだ遊べていない。
そうした状況でも割と軽い気持ちで遊び捨てることができる種類のゲームがある。それは無料配布によって手に入れたゲームだ(実のところ、前回記事の Wishmaster も無料で入手したゲームでした)。最近では Steam Greenlight によるインディーゲームの大規模流入のため、現在の Steam 上にはよほどのゲームコレクターでも集め切れないほどゲームが氾濫しているが、そのおかげもあってかゲームの無料配布といったキャンペーンを目にする機会も増えた。例えば Indiegala などは客寄せのつもりなのか、常時何かしらのゲームを配っているような印象がある。そのように無料で手に入れられるゲームにもSteam トレーディングカード機能が対応していることは多い。
タダでゲームを貰える上にカードまで、と思うかもしれない。しかしながら、問題のキモはここにある。というのも、Steamコミュニティマーケットではカードの売買には15%の手数料が設けられていて、そのうちの10%がValveに、5%が開発者の上がりとなるのだ。一部ではその上がりに目をつけてスパムまがいのゲームの配り方をしているような印象を強く受ける開発社もある始末だ(Indiegala はその類ではないので誤解なきよう)。こうした点はいずれ Steam Greenlight の抱える構造的問題として総括する必要がある気がしないでもないが、それは今のところ私の役目ではない。

いつものことながら前置きが長くなってしまいましたが、要するに、無料配布ゲームにはそのゲームなりに配られる理由があるのだから、カードを出すためだけにゲームを遊ぶことに負い目を感じる必要はないし、仮にダメな点があったとしてもそのゲームを批判的に評価することになんら道義的な問題はないでしょう。しかしながら、スパムまがいに配られる某社の本格的にどうしようもないクソゲーの類の話などは、する側としても面白くないのでしたくはない(告発的な意義はあるのかもしれないが、そこまで責任を負う気は今のところない)。そういうわけで今回は、無料で手に入れたゲームのうち、ある程度遊んでみて一定の評価に耐えうる点が認められたゲームについていくつか取りあげてみようと思います。

そういえば、最近Steamのレビュー機能に「無料で入手した製品」を示すボタンが追加されましたよね? あれってはじめは開発者からレビュー用のキーを貰ったプロレビュワーな人がそれを明示するための機能だと思っていたのですが、一般的な受け取られ方はどうもそうではないようで、「タダで貰ったけどクソゲーだった」というようなしょーもないレビューの盾に用いられているような気がします。実際のところ、正しい使い方はどうなんでしょうね?
と、話が逸れましたが、本題のゲームの話はここからです。



Journey To The Center Of The Earth

タイトルどおりジュール・ヴェルヌの『地底旅行』を題材に、3人の男たちが地の底への旅に挑むゲーム。ジャンルとしてはパズル要素の強いアクション・アドベンチャーゲームといったところだろうか? 特徴的なのはそれぞれ特技を持つ3人のキャラクターを状況に応じて切り替えて進むシステムだ。あるキャラがボタンを踏んで扉を開けているあいだに他のキャラが先に進んだり、採掘能力のあるキャラが障害物を採掘して除去したり、ジャンプ力の高いキャラが幅の広い地割れを先に飛び越えて足場を作ったりといった具合だ。
ジャンプ力のある Axel が先に飛び、足場となる岩を落とす
さてゲームとしてはどうかというと、アクションゲームが苦手な私としては、素直にパズル系アドベンチャー一筋にしておけばよかったものを、無駄にアクション要素を入れてしまったせいですべてが台無しになってしまった印象を強く受けた。アクションゲームとしての難しさの演出のためなのか、キャラクターが落下死などするたびにわざわざチェックポイントまで戻されてしまうことなどは、パズル・アドベンチャーとしてのあるべき進行テンポを完全に破壊している。かといってアクションゲームとしてどうかといえば、別にこれといって楽しめる部分もなく、ただジャンプボタンを押す位置やそのタイミング程度にしか関わってこない。こういうのは失敗したらその直前から(例えば落下死なら手前の崖から)再開させてやるのがスマートで現代的なのだ。この部分を変更するだけでゲームの印象はだいぶ違ったことだろう。私はほんのちょっとした(ボタン押下のタイミングの)ずれのために数分かかる同じ作業のやり直しを繰り返し要求してくるというこの軍隊の新兵いじめのようなシステムに耐え切れず、2面の途中で早々に脱落してしまった。
棘に刺さって死んだ仲間の横でうなだれているが、筆者もそんな気分になる
申し添えておくと、個人的にはパブリック・ドメインと化した古典の名作を題材にゲームを作るのは大変結構なことだと思う。タダで名作を使えるから安直に用いているという批判が意地悪な向きから飛びがちなのもわからないではないが、名作は名作たる所以があるゆえに名作なのであり、それをタダで(ゲームとして上手に活かして)使えるなら自由に使えばいいのではないか(まあルイス・キャロルものは多すぎる気もするが)。特にライセンスにカネをかけられないインディーゲームこそこうした過去の偉大な遺産を積極活用すべきだとも思う。とはいえ、いくら題材がよくてもゲームとして面白くなければそれはどうにもならない。このゲームからはそういった教訓が得られたのでした。



PERFECT ANGLE: The puzzle game based on optical illusions

こちらは完全なパズルゲーム。3Dビューの錯覚を利用した美しいパズルを解いていくことで、ある老人の記憶を再構成していく物語性をもつゲームだ。このゲームの最大の特色は、やはりその美しい3Dパズルそのものだろう。宙に浮く3Dの物体を前に、カメラアングルをぐるぐる回して答えの図像を探していくのだが、ピタリとハマったときの快感は他のパズルゲームにはそうない体験だ。老人の物語も地味ながら気になり、最初のうちは私もこのゲームを最後まで遊ぶ気になっていた。
例えばこれが、こうなる→
しかしながら。しかしながら、このゲームにはどうしても許せないことがあった。それはパズルのヒントをゲーム内課金の形で販売していることだ。
純パズルゲームでは一般に、ヒントを提供する機会の設定はほぼ製作者側の裁量に任されている。このゲームでは、まず1問ごとに5分という時間が設定されており、パズルを解けないあいだに5分が経過すると、その1問限りのヒントがアンロックされるという形式だ。ここで問題なのは、1問あたり5分という時間が長すぎる点と、その長い時間をゲーム内課金として販売していることだ。
例えば総プレイ時間や解いた問題数に応じてヒントのアンロック数が増えていくようなかたちであったり、ユーザーを5分と飽きさせずにじっくり考えさせる面白さがこのゲームにあれば、これほどゲーム内課金が悪目立ちすることもなかっただろうが、このゲームではその点でもあまりうまくいっていない。3Dビューの錯視を利用したパズルゆえに、背景画面はパズルの面白さを構成する重要な要素の一部なのだが、同じ背景の使いまわしがやたらと多く、10問ぐらいクリアしたあたりで早々に飽きてきて、5分も考える時間を設ける気にはなれなくなるのだ。簡単な問題と難しい問題の落差が激しいのも、まずデザインの目的にヒントを売ることが第一にあり、難しい問題における5分という時間の長さを実感させるためではないのかと邪推してしまう。
物語は気になる。気になるのだが、耐えられなかった
このゲームの製作背景については知らないし、調べてもいない。だがその操作性とゲーム内課金の仕組みから推測するに、おそらくスマホゲームの移植作なのだろう。カメラ操作機能がアングルの回転しかできないのもおそらくスマホ由来のためで、せっかく美しい3Dビューの持ち味があるのだからもっとカメラを自由に動かせればいいのにと最初は思ったものだが、そんな思いはゲーム内課金の悪質さの前では些細なものでしかなかった。
こういう時間に値段をつけて忙しい金持ちに売りつける文化はソシャゲーやスマホゲーでは一般的なものなのだろう。だがPCゲームはそういったソシャゲー、スマホゲーの悪習からは無縁でなければならない。これは操作性の悪いスマホゲーのベタ移植が批判される問題とはまったく質が違い(ダメなゲームはただダメなだけで無害であるが)、暇人が腰を据えて遊ぶものであるPCゲームの本質に対する攻撃も同然とみなさねばならない。物を作っている側がどう商売しようと自由ではあるかもしれないが、とはいえPCゲーマーとしては決して歓迎したくはない商売法であり、そのためにも残念ながらこのゲームには否定的な評価を与えるしかない。
かつては批判されたDLC商法が今では当たり前のことになってしまった展開のような悲劇がこの方面でも繰り返されないことを願う。とりわけ、ことが時間とカネの問題であれば。せめてF2Pであればこうした商法も許せたものだが。……あれ? そういえば無料でしたねこのゲーム……。あれ?


当初は3~4作分まとめて投稿する予定でしたが、思わぬところで痛い罠を踏んでしまったため、今回の記事はこれで終わりです。お疲れ様でした。

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